コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンス

はじめに

最近、いろいろなところで「コーポレートガバナンス」という言葉が使われるようになりました。「コーポレート」とは「会社・企業」のこと、「ガバナンス」とは「統治」のことです。日本語で「会社統治」「企業統治」と言われますが、最近は「コーポレートガバナンス」とか、単に「ガバナンス」と呼ぶことも多くなりました。

「コーポレートガバナンス」を説明するとしたら、「会社の様々なステークホルダー(利害関係者)の利害を調整しながら、会社が健全かつ効率的に運営されるようにするための仕組みやそのための取り組み」のこということができるでしょう。

そう言われても何だかよくわからないという方が多いと思いますので、これからかみ砕いて説明していきたいと思います。

コーポレート・ガバナンスの必要性

株主は経営者を監視できるか?

別の記事(会社は誰のものか)でも書きましたが、株式会社の所有者は法律的には株主ですが、大規模な会社の場合、多くの株主は実質的に支配力を持っていません。大株主が経営をしていれば別ですが、現代の大企業と言われるような会社では、専門経営者が実質的に動かしている場合が多いのです。

それは別に悪いことではないと思います。株主も自分たちの代わりに、優れた経営者が会社を順調に運営して、株価を維持して(できれば上げて)くれれば嬉しいですし、安心です。事実、株主の多くは経営そのものにはあまり興味がなく、株価や配当、つまり自分たちが得するならばそれでいいというのが本音でしょう。

しかし、だからと言って経営者が何をしてもいい訳ではありません。法律を守ることは当然として、会社を適切に運営していく責任があります。ところが、会社の中で経営者がどんな経営を行なっているか、株主が細かくチェックすることはほぼ無理です。

会社機関は経営者を監視できるか?

そのため株式会社では、会社機関として取締役会や、監査役といった仕組みが用意され、経営者の行動をチェックできるようにしています。

会社のトップは一般に「社長」と呼ばれていて、会社を代表する取締役ということで、「代表取締役社長」という肩書きが使われることが多いのですが(必ずしもそうではありませんが、ここでは細くは説明しません)、この経営トップを監視したり、独断を防止するために取締役会という会議体があったり、チェック係の監査役というものがあります。

ところが、これらが必ずしも機能せず、形だけのものになっているということが批判されます。こういうのを「形骸化(けいがいか)」と言います。一例を挙げれば、取締役も監査役もみんな会社の中の人間で、結局トップになった社長のいいなりで誰も何も言えない、といった場合です(他にも色々なことがありますが)。組織の中ではよくあることですね。

「よくあることだよね〜」では済まないのです。経営層の彼らはあくまでも株主の代わりに経営を任されているのであって、彼らが好き勝手に動かしていいものではないからです。

経営者を監視できないとどうなるか?

経営者の行動をチェックできないとどういうことが心配になるのか考えてみましょう。

会社には、特に大企業には多くのステークホルダー(利害関係者)が存在します。会社はこれら多くのステークホルダーとの関わりあいの中で成り立っています。そしてそれらに様々な影響を与えることにもなります。

例えば、ある大企業が本当は赤字なのに利益が出ているかのように取締役達の中でごまかし、株主や世の中の人々をだましていたとします。もちろん不正であり犯罪行為です。そして、そのうちにどうにもならなくなります。結果、突然倒産したりするとどうなるでしょうか?

もう大騒ぎです。株主も大損、従業員は職場を失くし、その家族は生活の危機に陥り、取引先はお金を回収できずに連鎖倒産、工場閉鎖で地元商店街は壊滅・・・。

ゾッとする話ですが、これまで実際にこのようなことが多々ありました。株主が損するだけの話ではなく、社会的に大きな問題になってくるのです。その時になって、経営者達の責任を追求したところで、「時すでに遅し」です。

実際、世の中では企業不祥事が絶えません。多くの人は一生懸命、まじめに仕事をしているのですが、悪いことをして私腹を肥やす人、やむを得ずに不正に手を染めてしまう人、悪いことをしているつもりはないけどおかしな経営をしてしまう人、等々いろいろな人がいて、結果的に問題が起きてしまうのです。

会社機関の再検討

そもそも、そのようなことにならないように、法律として会社機関が整備されていたのですが、現実にはなかなかうまく機能しなかったわけです。そこで、会社がきちんと運営されるような仕組みをしっかりと整え直すことが求められるようになったのです。人間のすることですから完璧は難しいでしょうが、努力をしていくことは必要なことです。

ここまで、経営者の監視ということに焦点を当てて説明してきましたが、コーポレートガバナンスの狙いはそれだけではありません。

最初に述べたように、現代の経営者には様々なステークホルダーの利害をうまく調整することが求められます。特に、実質的に経営者支配といわれるような状況の中で、株主の利益をどう守るのかということが求められます。これらについてはステークホルダーの記事(企業とステークホルダー)を参照してください。

また、経営者の不正を防止できればそれでよいということでもなく、例えば経営者の意思決定が本当にそれで良いのかチェックする必要があります。例えば、役員の報酬は適切か、従業員の給料は適切か、株主への配当は適切か、今回の投資のリスクは大きすぎないか、女性の活躍の場を提供できているか、などなど実に様々です。

色々な要因がありますが、コーポレートガバナンスが話題になったのは、だいたい以上のようなことからです。

そういうわけで、最近では「あの会社ガバナンスなってないな〜!」とか、「それってガバナンス上、問題なんじゃない?」なんていう会話がよく聞かれるようになっています。

では、具体的に何をどうしたのか、ということになるのですが、それについては少々ややこしい話をしなければなりません。いわゆるガバナンス体制ということです。基礎的な話ではなくなる部分もあるのですが、それでも大事なことなので、もう少し頑張ってください。

ガバナンス体制

会社法の制定以降、有限会社が廃止となり、小さな会社も株式会社に一本化されることになりました。そうなると株式会社と言ってもその規模は大小様々となり、会社機関も多様になりました。

というのも、小さな会社が大きな会社と同じような会社機関を整備することは現実的に無理なので、会社の規模に合わせた会社機関のパターンが認められるようになったのです。

小さな企業に用いられるもっともシンプルな形が、「株主総会」と「取締役」というパターンです。会社規模が大きくなると、これにいろいろと追加されていくことになるのです。

実に多くの組み合わせがあってけっこう面倒なので、全部は説明しません。ここでは大規模な企業に限定して説明していきます。

ちなみに、「大会社」という分類に入る会社は、資本金5億円以上か、もしくは負債総額200億円以上の株式会社ということになります。

このような大会社には、「監査役会設置会社」「指名委員会等設置会社」「監査等委員会設置会社」の3つの種類が認められていて、このどれかを選ぶことになります。

これらの説明に入る前に、「監査役」について少し詳しく見ておきましょう。

監査役の役割

監査役はどんな仕事をするのでしょうか。「監査」とは、取締役たちとは別の誰かが一定の基準(法律など)に照らしてその行為を適否を判断することを言います。かんたんに言えば、ルール通りにちゃんとやっているかチェックすることです。

ちなみにこれに対して、取締役会は「監督」を行います。監督する者とされる者の区別はやや不明確ですが、経営上の観点から見てその行為の適否を判断します。その意味で客観的とは言えない面もあります。

監査役は取締役がきちんと仕事をしているかどうかを株主に代わってチェックする役割と、監査の結果を報告する役割を持っています。したがって、監査役は株主総会で選任され、解任も株主総会の決議が必要になります。

監査役がチェックするのは取締役の業務そのものについて(業務監査)と、お金の処理がきちんと行われているか(会計監査)の二つの範囲になります。

監査役はその役割上、会社役員の中でも独特な性格を持った仕事です。まず、会社から独立性・中立性を求められます。そうでなければチェックになりません。つまり利害関係があったりするとチェックが甘くなるからですね。

また監査役が複数いたとしても、1人でも監査役としての権限を行使することができます。これを独任制と言います。

監査役は取締役などに対して、報告を求めることができますし、自ら調査もできます。もし取締役の行動に問題がある場合はそれを止めることを請求できます。

これらを見ると、監査役はけっこう強いのだということがわかりますね。というか、株式会社制度を支える非常に重要な役割があるのです。

監査役会設置会社

監査役会設置会社の仕組み

それでは3つの種類のうちの「監査役会設置会社」から見ていきましょう。

大会社である公開会社(株式上場している会社)は、「監査役会」を設置しなければなりません。「監査役会」とは、先ほど説明した監査役で構成される会社機関です。

監査役会は3人以上の監査役が必要で、その半数以上は外部から監査役を招かなければならないことになっています。これを「社外監査役」と言います。

ちなみに、社外監査役は過去にその会社やその会社と子会社と関係のない人でなければなりません。人間関係のしがらみや利害関係があると、中立的な監査ができないからです。

そして、監査役会での決議は監査役の過半数によって決まります。また、監査役の中から常勤監査役を選ばなければなりません。

つまり、取締役会から独立した監査役会が、取締役の仕事を監視・監督する形になっているのを「監査役会設置会社」というわけです。

図にするとこんな感じになります。

監査役会設置会社
監査役会設置会社

かんたんにまとめます。取締役も監査役も株主総会によって選任・解任されます。取締役会は代表取締役を選任し、業務執行を監督します。社外監査役を半数以上とする監査役会は取締役や代表取締役の監査を行います。

監査役会設置会社の問題点

この監査役会設置会社ですが、これはガバナンス的には「緩い」と言われています。どういうところが問題なのでしょうか?

まず、ポイントになるのは監査役制度です。監査役は独立性・中立性を求められているのですが、多くの場合、その人事権は代表取締役社長が握っていたりするわけです。監査役が何らかの人間関係に束縛されるようでは、取締役を中立的にチェックするっていうのは難しくなりますよね。

結局、見た目の形は整っているけど、実質的な役割を果たせないということで、これも「形骸化」というわけです。そこでこのあたりがガバナンスの改善点の一つとなるのです。

また、取締役がその他の取締役を監視するといっても、会社内部で上がってきた身内同士で厳しいチェックができるかというと疑問です。そこで、社外取締役の役割が重要になってきますが、いまのところ社外取締役は義務化されてはいないのです。(今後そうなるかもしれません)

だいたいこんな理由から監査役会設置会社は、3つのタイプ、つまり「監査役会設置会社」「指名委員会等設置会社」「監査等委員会設置会社」の中ではもっともガバナンスが緩いとされているわけです。

そして実は、このタイプが日本の公開会社の中ではもっとも多いのです。この監査役を巡る問題をどうするか、ということが日本企業のコーポレートガバナンスにおける大きな課題の一つとなっています。社外取締役と社外監査役がどれほど力を発揮できるかが、今後のポイントになると思われます。

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指名委員会等設置会社

次に「指名委員会等設置会社」です。コーポレートガバナンスの強化のために、2002年の改正商法で新たに導入された制度です。

日本の産業界もコーポレートガバナンスを強化しなければいけないという機運が高まり、このアメリカの形をもとに考え出されたのが、この「指名委員会等設置会社」です。

この基本的な考え方は、取締役会の主な役割を経営の意思決定ではなく、経営者を監視監督することに求めたものです。1970年代のアメリカで始まり、その後ヨーロッパに広がったもので、モニタリングモデルと呼ばれています。ポイントは「監督と執行を分離」したところです。

指名委員会等設置会社の基本的な仕組み

では、指名委員会等設置会社の基本的な仕組みをかいつまんで説明していきましょう。

まず、取締役が業務執行することは許されていません。これが「監督と執行」を分離するということです。ただし「取締役の資格ではだめ」、ということなのですが、これはあとで説明します。

では、業務執行は誰がするのかということですが、これは「執行役」が行うということになっています。業務執行を執行役、執行役の監視は取締役という役割分担になるということですね。要するに、経営は執行役が行うということです。

実は、この執行役と取締役は兼任することが可能です。先に書いた「取締役の資格では業務執行できない」と書きましたが、取締役が執行役を兼任し、執行役の立場で業務執行、つまり経営をすることは可能だということです。

「なんだ、それじゃあガバナンスのために監視監督と執行を分離した意味がないじゃないか!」と思った方、その通りなんですが、ここは難しいところです。

確かに経営している本人が自分たちの監視や監督をするのはどうしても甘くなってしまいますが、完全に分離してしまうと、監視監督をするためにはそれなりに情報が必要で、経営の現場にいないと監視監督が十分にできなくなってしまうのです。取締役会と執行役をつなぐ役割の人が必要で、過度に分離してしまうとかえって良くないのです。つまり、「経営のことがわからない人に経営の監視や監督はできないだろう」というわけです。

ただし、執行役は取締役を兼任できるのですが、監査委員を兼任することはできません。それは当然ですよね。

もう一つの基本的な仕組みが「委員会」です。指名委員会等設置会社には、3つの委員会が設置されます。「指名委員会」、「監査委員会」、「報酬委員会」の3つで、これらをまとめて「指名委員会等」と呼んでいます。この3つの委員会が会社経営の重要な意思決定を行うことになっているのです。

この委員会のメンバーは取締役によって構成されるのですが、ここでポイントになるのが、各委員会メンバーの過半数が社外取締役でなければならないということです。

伝統的な監査役制度の問題点は、経営トップが取締役や監査役の人事とか報酬を事実上決定していたために、取締役や監査役が経営トップのチェックを十分に行えないというところでした。

こうした社内の人間関係に束縛されず、チェックが十分に行われるよう、社外取締役を中心とした委員会にこれらの重要な役割を担わせることにしたわけです。

各委員会の役割

では、各委員会の役割について見ていきます。各委員会は3人以上の委員で組織されますが、過半数が社外取締役です。3人の場合であれば、2人が社外取締役で、1人が社内取締役。4人いる場合であれば、(過半数ですから)3人が社外取締役で、1人が社内取締役です。

まず、「指名委員会」は株主総会に提出する取締役の選任・解任についての議案を決定します。つまり「この人を取締役に選びたいと思いますが、どうですか?」という案を出すということですで、決定は株主総会がします。

次に「監査委員会」ですが、これは文字通り監査をする委員会です。誰の監査をするのかというと、執行役や取締役等が職務をきちんと行なっているかということを監査します。なお、この監査は法的に問題がないかどうかという「適法性」監査だけでなく、経営がちゃんとしているかどうかという「妥当性」監査にもおよぶことになっています。

3つ目の「報酬委員会」は、執行役や取締役等の報酬をどうするかを決めます。執行役が自分たちに都合良く報酬を決められないように、社外取締役が中心になって決めるのです。

このようにして、執行役や取締役がそれぞれの職務を果たすことができるような仕組みを設計しているわけです。

ちょっとややこしいでしょうから、図にしておきます。だいたいこんな感じになりますので、図を見てからもう一度文章を読み返してみてください。

指名委員会等設置会社
指名委員会等設置会社

執行役と代表執行役

経営の指揮を取るのは執行役ですが、執行役の仕事内容は取締役会で決定された範囲で行うことになります。会社経営の基本方針などの重要事項は取締役会で決定されますが、執行役に何も決めることができないということになると迅速な経営判断ができなくなります。

したがって、取締役会の決議によってかなりの範囲の決定を執行役に任せることができるようになっています。

執行役は取締役会から委任された範囲において、決定し、執行することになります。ただし執行役は取締役会を招集し、報告をしなければなりません。

また、執行役が2人以上の場合、代表権を持つ「代表執行役」が選ばれます。1人の時はその人が代表執行役になります。この代表執行役が実質的な会社経営のトップという形になりますが、取締役会は決議によって代表執行役をいつでも解職できることになっています。

そういう意味で、代表執行役は好き勝手な経営ができないのです。仮に、代表執行役が取締役を兼任していたとしても、社外取締役が中心になる3つの委員会で重要な意思決定が行われるので、やはり自分の好きなようにはならないということです。

指名委員会等設置会社の現状

ここまで指名委員会等設置会社について解説してきましたが、かなり強いガバナンス体制ですね。では、実際、このタイプの会社はどれほど導入されているのでしょうか?

実は、指名委員会等設置会社を選んだ企業は、公開会社のうちほんの数%に過ぎません。ちなみに2019年2月末の段階でわずか71社です。一方、ほとんどの企業が選んでいるのが、「監査役会設置会社」なのです。

「これじゃあ、意味ないな」という感じがしますね?

「コーポレートガバナンスを強化するためにこれをやりましょう!」って作ってはみたけど、ほとんど導入してもらえのでは制度を作った意味がありません。

導入企業が少ないのは、おそらく3つの委員会の権限が強すぎるからだろうと言われています。つまり経営者が「窮屈すぎてイヤ」ってことですね。ガバナンスも大事ですが、経営者が存分に能力を発揮して会社を盛り上げていくことが大事です。その意味では、どこまで厳しくするのか、というバランス感が重要になるわけです。

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監査等委員会設置会社

以上のようなことから、その後の改正会社法で、とても厳しい「指名委員会等設置会社」と緩い「監査役会設置会社」の中間的な仕組みができました。それが次に説明する「監査等委員会設置会社」です。

監査等委員会設置会社の仕組み

それでは、かんたんに説明していきます。この制度の基本的な仕組みは、取締役のうちの一部が「監査等委員」になって、取締役会で経営の妥当性をチェックするということです。このあたりは指名委員会等設置会社の監査委員会と似ていますが、3つの委員会は置かなくてもよいことになっています。なお、任意で他の2つの委員会を置くことはできます(つまり自由ということ)。

また、監査等委員は取締役会において経営の妥当性についてチェックし、議決権を行使できることになっています。監査役会設置会社における監査役が取締役会での議決権を持たないところとは異なる点です。その分、監査機能が強化されていると言えます。

監査等委員は株主総会で選任されます。そして監査等委員会は3人以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければいけません。

業務執行は取締役のうち、代表取締役および業務執行取締役が行います。指名委員会等設置会社のように執行役は置かれません。このあたりは監査役会設置会社に似ています。

このように指名委員会等設置会社ほど法律で厳しく縛らず、取締役の監督機能を充実させたのが、監査等委員会設置会社というわけです。

監査等委員会設置会社
監査等委員会設置会社

監査等委員会設置会社の問題点

もちろん、この制度に問題がないわけではありません。かなり自由度の高い仕組みになっているので、企業ごとの工夫によってうまく利用できるのは良い点だと思いますが、それがガバナンス上機能するかどうかが重要です。

例えば、監査役会設置会社からこの制度に移行する場合、社外監査役を社外取締役として監査等委員に横滑りさせることが想定されます。つまり、制度は変更したけれど、結局何も変わらないということになる可能性があるのです。

また、監査等委員は常勤である必要がないとされています。そうなると、果たして監査を行うための十分な情報が得られるのだろうかという心配が生じます。

その他、指名委員会と報酬委員会は任意となっていますが、だからと言って本当になくていいのか、ということも問題として挙げられます。せっかく法律的に緩めた形になっているのだから、会社の規模や状況に応じて、きちんと機能するような委員会を設置してもいいのではないかと思います。

結局のところ、制度を運用するのは人なので、どのようなつもりで運用するかによってその効果は違ってくるということでしょう。当然ですが、「監査等委員会設置会社にしました!これでガバナンス強化しました!」っていうポーズだけではダメですね。

監査等委員会設置会社の導入状況

この制度の導入企業は、開始してから年々増加しています。2018年8月の日本取締役協会の調査によれば、東証1部上場企業の24.4%にまでになっています。(ちなみに指名委員会等設置会社は2.9%です。)

監査等委員会設置会社のうち、指名・報酬委員会の両方を設置しているのは29.4%で、どちらも設置していないのは65.3%です。どちらか一方を設置しているのは数%という状況です。

この数字だけではなんとも言えませんが、これで日本企業の経営が投資家から高く評価されるようになったり、企業不祥事が少なくなったり、という結果になればいいなあ、と思います。

補足:監査役設置会社、常務会、社外取締役

ところで、監査役というのは、必ず設置しなければいけないというわけではありません。色々な条件のもとで設置しなければいけないのです。

規模の小さな会社は、「監査役」や「監査役会」がなかったりします。監査役会はないけど、監査役は設置されているという会社を「監査役設置会社」と言います。法律の話で面倒なので、これくらいにしておきます。経営学的に大事なのはガバナンス体制です。

それから「常務会」といったものが存在したりします。簡単に説明しておきます。常務会というのは、社長を中心にした役付きの取締役の会議です。1950年代以降の日本の大企業に多く見られるようになったものです。これには法的根拠はありませんが、取締役会よりも頻繁に行われ、実質的に最高意思決定の場になることが多く、結果的に社長の権力を強くするものと考えられてきました。ちなみに常務会という名称ではなく、別の名称で同じような会議体を持っている会社もあります。いずれにしても法的根拠はありません。

また、先ほども軽く取り上げましたが「社外取締役」の重要性が指摘されています。その会社の外部の人間でありながら取締役になっている人です。ガバナンス上、取締役の監視をするために重要ですが、日本の会社は社外取締役がほとんどいないということで批判されてきました。

ここで挙げたようなことは、コーポレートガバナンスの観点からはあまり良い評価はされていません。ですが、問題点は徐々に改善されつつあります。

もっと詳しく学びたい人のために

伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征『会社法(第4版)』有斐閣、2018年

ここで説明したようなことは、経営学というよりは、実は会社法に関するものを読んでおいた方がしっかりと理解できると思います。これは少々固めの本ですが、スタンダードとして定評がありますし、わかりやすいです。コーポレートガバナンスコードなど最新の話題もカバーしています。

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