企業とステークホルダー

企業とステークホルダー

はじめに

ステークホルダー」という言葉をよく耳にするようになりました。経営学においてはとても重要なキーワードです。特に、経営戦略やコーポレートガバナンス、社会的責任論など多くに関わってきます。ここでは、その意味やそれに関連することを少し書いておきたいと思います。

「ステークホルダー(stakeholders)」は日本語では利害関係者という意味です。最近は利害関係者というよりも「ステークホルダー」と呼ぶのが普通になってきたように感じます。ビジネスの世界では、もうかなり一般的な言葉となっています。

さて、その意味ですが、一応「企業にとって直接・間接的に何らかの利害関係を有する者」ということになります。企業の行動によって影響を受けたり、与えたりする存在と言ってもいいと思います。

具体的にはどのようなものでしょうか。ざっと挙げていくと、株主、金融機関、取引業者、顧客、従業員、地域社会、行政や政府などがあるでしょう。

さらに、人間ではありませんが捉え方によっては自然環境などを挙げる場合もありますが、私はこれにはちょっと疑問があって、自然環境そのものというよりは、「自然環境を守ろうとする人や団体」と考えるべきだと思います。

それはともかくとして、ステークホルダーが企業とどのような関係にあるのかを考えることが重要です。それにはいくつかの見方があります。

支援者としてステークホルダー

企業は単独では存在できません。例えば、製造業の場合を考えてみます。

その会社に原材料や部品を納入してくれる業者がいないと生産できませんし、それら原材料や部品についても良いモノを適正な価格で供給していくれるかどうかも重要です。

その会社の製品を買ってくれるお客さんは決定的に重要です。製品を作っても買ってくれなければ企業は成り立ちません。また、製品を作っても、それを売ってくれるお店がなくては売れませんし、お店がその会社の製品を積極的に売ってくれるかも重要です。

もちろん株主も重要です。その会社の経営に理解を持って出資してくれる人がいて企業は安心してビジネスを行えます。新たな工場を作って規模拡大を図るにも株を引き受けてくれる株主やお金を貸してくれる金融機関が必要でしょう。

他にも挙げられますが、このあたりにしておきます。要するに、企業はこれらステークホルダーに支えられて活動ができるという側面があります。その意味では企業の「支援者」です。

やっかいなことはこれら「支援者」の利害は必ずしも一致しないというか、対立する場合も少なくありません。

例えば、株主に配当を増やすということと、従業員の給料を増やすということは、ある程度両立させることはできますが、どちらかを増やせばどちらかが減るという性格のものです。製品の価格を下げればお客さんは喜ぶかもしれませんが、会社の利益は減って株主は不満を持つかもしれませんし、価格が下がってたくさん売れるかもしれませんが、工場は大忙しで従業員は困るかもしれません。

つまり、これら支援者としてのステークホルダーの、様々な要求をうまく調整して、会社を運営することが経営者の腕の見せ所ということになります。

敵対者としてのステークホルダー

一方、ステークホルダーが「敵対者」になる場合もあります。

例えば、企業が公害を発生させるたりすると(もちろんこれは企業に問題があるわけですが)、地域住民や消費者は企業に対して厳しい態度を示します。企業不祥事や欠陥商品などでも同じようなことが起こります。訴訟を起こしたり、不買運動に発展したりします。

企業に問題があるような場合でなくても、企業の決定や行動に理解をしてくれないという形で敵対する場合もあるでしょう。

例えば、新しい製品や技術ができたのに、国や行政の規制があって販売できない場合です。また、経営者が将来を見据えて新たな投資を行いたいと考えても株主が反対して実行できないという場合もあるでしょう。

いずれにしても、企業にとってステークホルダーを味方につけなければビジネスをうまく進めることができないということです。

協力者としてのステークホルダー

最近、この関わり方が注目されるようになってきました。「協力者」としてのステークホルダーです。敵か味方かという捉え方でなく、協力しあって問題を解決していこうというものです。

企業とステークホルダーが十分な対話によって協力関係を築き、より良い状態を作り上げていくということです。

例えば、株主との関係で言えば、株主総会においてじっくりと議論し、株主は経営の内容に踏み込んでより良い経営をするように要求し、経営側もきちんと情報を公開して株主に理解を求めるといった形です。それによってより良い経営が行われるならば、全体として良い方向に進んでいくことが期待できます。

他にも、消費者と企業が協力してより良い製品を作る、地域社会と企業が対話をして社会的な課題を解決するビジネスを実行する、などといったことが考えられます。

企業と社会の関係

これらのステークホルダーの議論は、企業と社会の関係を考える切り口となります。「会社は誰のものか?」ということも大事ですが、「会社は誰のためのものか?」ということを考えることにもなります。

会社は法的には株主のものです。ですから、株主を重要な存在と考えることは当然です。しかし、会社は株主のためだけにあるのではなく、社会のためにあり、社会の中で存続し、社会に対して責任を持っている存在だということを考えさせられます。

つまり「企業の社会的責任」や「コーポレートガバナンス」を考える重要な観点を提供してくれるわけです。これらについては、また別の記事で述べたいと思います。

もっと詳しく学びたい人のために

企業とステークホルダーの関係については、企業の社会的責任(CSR)やコーポレートガバナンスなどとの絡みで多く扱われます。本はたくさん出ていますが、以下のようなものを読んでみてはいかがでしょうか。

谷本寛治(編)『CSR経営』中央経済社、2004年

大平浩二(編)『ステークホルダーの経営学』中央経済社、2016年

谷本寛治著『日本企業のCSR経営』千倉書房、2014年

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