ポーターの競争戦略 ー3つの基本戦略

はじめに

企業は自社の存続と成長のために会社全体の戦略を策定しますが、それを「全社戦略」と呼ぶならば、個々の事業が競争に打つ勝つために策定するのを「事業戦略」と呼びます。

例えば、ある会社がA事業、B事業、C事業の3つを展開しているとしましょう。それら3つの事業をトータルに見て、会社全体を方向付けていくのが全社戦略です。

そして、同時にABCのそれぞれの事業は、それぞれの市場で他社と競争を繰り広げ、勝ち残っていかなければなりません。そのための各事業の戦略を事業戦略と呼びます。

その意味で、事業戦略は一般に競争戦略と捉えられます。それぞれの事業が戦う市場の中で、「競争優位」をいかに築き上げるかが重要なポイントになるわけです。「競争優位」というのは、競争上で他の企業と比較して競争上で強いところ、優位に立てるところです。

競争戦略について

ここでは、M.E.ポーター(Porter)の競争戦略に関する理論の中から、「3つの基本戦略」について説明します。とても有名なものですし、競争戦略を理解するのに、大変わかりやすいものだと思います。

ビジネスの世界において、企業は常にライバル企業との競争を繰り広げているわけですが、ビジネスの世界における競争というのは、陸上競技などの競争とは少々性質が異なっています。

例えば、100m走を考えてみましょう。全力で走り抜けて、トップを目指します。トップになれないとしても少しでも上の順位、少しでも早い記録を狙います。1位が最高ですし、オリンピックなどでは3位に入らないとメダルはありません。

ビジネスの世界でも金メダルが一番イイと思いますよね。でもその場合、何を基準に決められるのでしょうか?

売上高? 利益額? 市場シェア? 時価総額? 経常利益率? ・・・

見方はいろいろあります。さらには、これを1年で見るのか、四半期で見るのか、3年とか5年で見るのか、といった時間軸の視点もあります。

様々な見方があって、一概には言えません。

ですが、ビジネスである以上、何らかの形で競争に「勝たないと」いけません。ここで重要なのは「勝つ」というのはどういうことか、ということです。

ビジネスの上で「勝つ」ということは、きちんと「儲けられるかどうか」ということです。言い換えれば、儲けられるような競争をすれば良いということです。ある意味、売上高で一番になれなくても、利益がきちんと出ればいいわけです。

3つの基本戦略

ポーターは、ビジネスでは儲かるような「ポジション(位置)」を明確に取ることが重要だとしています。それぞれの状況に応じた、儲かるような「位置取り」が大事であって、業界1番には1番の、2番手には2番手の、中小企業には中小企業の「戦い形」があるというわけです。このあたりがとても面白いところだと思います。

ポーターはそのための戦略として、3つ(あるいは4つ)の基本戦略があるとしています。そこで、ここではその3つの基本戦略について説明していきます。

ポーターは3つの基本戦略を説明するのに、以下のようなマトリクスを使っています。

横軸には「競争の優位性」をとり、「低コスト地位」を狙うのか、「顧客から特異性を認められる」ことを狙うのかで分けます。

「低コスト地位」というのは、文字通りどこよりも安いコストで作れるという立場です。「顧客から特異性を認められる」というのは、価格以外の点でこの会社の製品は「ここが違う」と意識されるような立場をとるということです。

縦軸には「戦略ターゲット」をとり、「業界全体」を相手にするのか、「特定セグメント」を相手にするのかで分けます。「セグメント」というのは切り分けた部分というような意味で、「特定セグメント」ということはある特定の買い手に絞り込んで製品を売るということです。

それで、この2つの軸から、図のように3つの戦略(もしくは集中戦略を二つにわけて4つの戦略)が表されます。

業界全体をターゲット(売る相手)に想定した戦略は「コストリーダーシップ戦略」と「差別化戦略」の二つです。そしてポーターは全体を相手に戦う場合は、究極的にはこの2つしかないと言います。

そして、特定の買い手グループをターゲットにする戦略は「集中戦略」です。大きな市場を狙うのではなく、ある特定の顧客・ニーズに絞り込んだ戦略「ニッチ戦略」と呼ばれたりもします。「すき間戦略」と呼んだりもしますが、大企業が手を出さないような市場に絞り込んでビジネスを行うやり方です。

これをもう少し細かく分けると、低コストの集中戦略、差別化の集中戦略となりますが、いずれにしてもきめ細かな対応をしていく戦略ですから、そもそもいろんなパターンが考えられます。それらをまとめて「集中戦略」と呼ぼうということです。

ポーターの競争戦略a

コストリーダーシップ戦略

それでは、まず「コストリーダーシップ戦略」から少し細かく説明していきます。

低コスト地位をとるということは、低コストで生産できるという体制ができあがっているということです。当たり前ですが、低コストで作ることができない会社がこの戦略をとったらすぐに潰れます。低コストで作れるということは、他の記事(PPM)で述べましたが、経験曲線を他よりも早く進んでいるということです。

経験曲線を早く進んでいるということは、業界でトップの地位にいるということになる場合が多いでしょう。どこよりも安く物を作れるということは、他の会社が簡単にはマネのできない技術や情報を蓄積していているからであり、この点で競争上有利な状態にあるのです。

安く作れるということから2つのやり方が考えられます。つまり、利益を多目にとって売るというやり方(他の会社と同じ値段で売っても利益を多目にとることができる)と、どこよりも安く売る(安くしても利益が確保できる)ということですね。いずれにしても、価格という面で有利な立場を取ることができるわけです。

差別化戦略

次に、「差別化戦略」です。ターゲットは先の「コストリーダーシップ」と同じ業界全体ですが、文字通り自らを他の会社と異なるように「差別化」するのです。

「差別」という言葉は日本語であまりイメージのよくない言葉ですが、経営学の世界では良く出てきます。他と「異なる」という意味です。

2番手以下の会社は、コストリーダーシップの会社と価格面で競争しても勝てるわけがありません。どうしたって価格競争には勝てませんから、それ以外の面で「ここが違うんだ!」というところを前面に押し出して、顧客から理解をしてもらい評価してもらうことが大事になります。

「異なる」といってもどういうところが異なるようにするかというと、具体的には「品質」とか、「デザイン」とか、「サービス」とかです。

この製品は他の製品よりも「高いけど品質が信頼できる」、「高いけどデザインがイケてる」、「高いけどサービスが最高に行き届いている」といったことですね。こうすることで、価格とは違う別の観点で競争するわけです。

これが成功すれば、2番手以下の会社もきちんと利益を出していくことができます。言い換えれば、競争の仕方を自ら変えてしまうということです。

集中化戦略

最後に、「集中戦略」ですが、これは他と2つと異なり、ある特定の買い手グループに絞り込み、その顧客に圧倒的な支持を得るという戦略です。

では、ある特定の買い手グループといってもどういうことでしょうか。

例えば、自動車業界で言うと、もの凄く値段の高い超高級車を欲しいという人々を考えてみるといいでしょう。数千万するような車は普通の人は買いませんし、欲しくても買えませんが、世の中には少数ですが確実にそういう人々が存在します。そういう人々が望むような車で勝負するのです。

もちろんこの戦略は顧客の数が相対的に少ないですから、ビジネスとしては大きなものにはなりにくいですが、熾烈な価格競争とは無縁ですし、顧客の支持を得られれば、安定的な状態を保つことができます。

おわりに

以上、ポーターの競争戦略として、有名な3つの基本戦略について説明してきました。

競争で勝ち抜いていくためには、つまり儲けを出していくためには、この3つの戦略のどれかを選び、中途半端ではなく、立ち位置を明確にしていかなければならないと述べています。

ここで興味深いのは、業界で1位でなくても、競争の仕方を変えればきちんと利益を出し、存続していくことができるのだということです。そこでのポイントは、「自ら有利な競争の形に持っていく」ということですね。

もっと詳しく学びたい人のために

M.E.ポーター著『競争優位の戦略 ーいかに高業績を持続させるか』ダイヤモンド社、1965年

M.E.ポーター著『競争の戦略』ダイヤモンド社、1995年

ちょっと分厚くて高価ですが、ポーターの競争戦略についてしっかりと学びたいならば、これらの2冊にチャレンジしてみてください。

『ハーバード・ビジネス・レビュー ストラテジー論文ベスト10 戦略の教科書』ダイヤモンド社、2019年

ポーターをはじめとして著名な戦略論者の論文をダイジェストで読めます。まずはこういうのから入ってみるのもいいと思います。

タイトルとURLをコピーしました